沖縄旅行 三日目
三日目
今日は沖縄南部の名所に行くことにする。
最初は琉球ガラス村。まずはヒルトンホテルで見た、美術工芸品としての高価なガラス作品を展示している部屋から見てみた。ただ、設備的に正直いかにも古すぎて、ホテルで見たような鮮烈な印象はなかった。
むしろ、かつて日常で使われていたというガラス製品たちが面白かった。コカコーラの瓶を半分に切って下の部分をコップとして使ったものや、駄菓子入れ、ハエ取り器など。
デザインとして考え抜かれた製品というわけではないはずなのに、ノスタルジックでとても味があるように思えた。
隣接する土産物のガラスショップで鮮やかなオレンジのグラスを買う。
再び少し車を走らせて、ひめゆりの塔へ。入り口で献花用の花が売っていたので、買って供えた。
ここでは親父は車から降りなかった。あまり待たせるのも悪いので早めに戻ったほうがいいのではないかと思ったが、母が隣接するひめゆり平和祈念資料館にも行きたいと言ったので、入ることにする。
結果としては、見ておいてよかった。ひめゆりの塔だけをさらっと撫でるだけでは全然わからない、この近辺で起こった惨事がこれでもかとばかりに展示されている。
特に第四展示室がすさまじい。亡くなった女生徒と教職員の白黒のぼやけた顔写真が壁一面にびっしり貼られ、それぞれにプロフィールと死因が書いてある。
場が発する圧がすごい。もし一人でここに来ていたら確実にボロボロ泣いていたと思う。
あと思ったが、たぶんバトルロワイヤルの作者はこの場に来て、影響を受けたのだろう。あまりにも似すぎている。
普通の人だったらあの場所の圧に飲まれて徹底的な反戦平和作品に行くだろう。この圧を受けきってそれでもエンターテイメント方向に持っていった高見広春はいろんな意味でやっぱりすごい人だと思った(あれも作品全体としては「飲まれるな、体制には全員で、全力で反抗しろ」という意味で、ちゃんと反戦メッセージを発しているけど)。
資料館の外に出ると、明るい沖縄の陽光が目に眩しかった。大きなガジュマルの木の向こうに見える、ひめゆりの塔の入り口からは、道路を挟んで土産物屋が軒を連ね、活況を呈している。
平和そのものの風景。資料館に入る前に見た風景と同じなのだけど、自分の中の受け止め方は、間違いなく変わった。ここに来てよかった、と思う。
ドライブは続く。沖縄の海といってもビーチだけでは飽きるだろう。そう思い、通り道にある慶座絶壁(ギーザバンタ)というスポットにも寄った。
Googleマップの写真には広々とした丘から見える海が載っていたのだが、これは近くにあるゴルフ場の写真らしい。実際には文字通りの絶壁だった。
海際まで細い道を降りてから見上げると、今まで自分たちが居た場所が十数メートル上に見える。ゴツゴツとした岩肌がむき出しで、まさに崖だ。
あんなところからもし落ちたらひとたまりもないだろうなあ。つい先刻、ひめゆり平和祈念資料館で見た女生徒の死因には、崖から身を投げて亡くなったという人もたくさんいた。崖の上を見上げると、思わずそういうことを想像してしまう(なお、この文章を書くために慶座絶壁のことを調べてみたが、沖縄戦の末期には実際にここを含めた喜屋武岬周辺の崖から身を投げた人がたくさんおり、米兵からは「スーサイドクリフ」などと呼ばれたらしい)。
ちょうど昼時になったので、次のスポットで食事をすることにする。
ガンガラーの谷は、鍾乳洞を利用したカフェ。食事もできると思って寄ったが、ここはあくまで純然たるカフェだった。
なぜパラソルかというと、日よけではなく水滴避け。
食事は隣接するおきなわワールドというテーマパークで取ることにした。
結局昼食もまたバイキング。食堂のざわめきや着ている服などからの大雑把な感触としては、最低でも五割以上が中国・韓国・台湾からの観光客に見える。バイキングのメニューも餃子が水餃子だったり、ビーフンがあったりと、需要に合わせた感じだった。
おきなわワールド内にも、玉泉洞という歩いて三十分ぐらいかかる広大な鍾乳洞がある。北海道ではなかなか見かけない風景。とてもおもしろかった。
水の中には、色のない小さなエビが泳いでいた。
Googleストリートビューでも見られるみたいなので、ぜひどうぞ。
洞窟から出て順路通りに進むと、土産物屋の中を次々と通過させられる。自分用の土産として、藍染のボーダーTシャツを買った。この辺の商売のうまさは北海道も見習いたいところだと思った。
椰子の実ジュース。一個まるごとだと持て余しそうなので、コップ入りのものを飲んでみた。自然のままの味だから当たり前ではあるが、中途半端な甘さの薄味で、そこまで美味しくはない。でも経験としては全然ありだ。
このテーマパークでは他にもエイサーやハブのショーなどもやっているらしいが、時間的な問題でパス。
車を走らせ那覇市に戻り、沖縄最大の商店街、国際通りの近くの駐車場に停める。
そこから少し歩くと、平和通り商店街というアーケードに出た。ここを通って国際通りに行けるようだ。
いろいろな土産物屋が並ぶが、やはり目立つのはシーサー。流石はライオンズマンションの入り口にもシーサーがいる県、沖縄。県内のありとあらゆる場所にシーサーが座っている。あとは、なぜかパワーストーンの店が多かった。
国際通りに出てから一度家族と行動を別にし、近くのジュンク堂書店に行ってみた。自分の本が売っていてうれしい。
地元の街だとひいき目で置いてくれているのではないかというような感覚もあったのだけど、こういう日本の逆端にちゃんと置いてあるのを見ると本を出したということを改めて実感する。
家族が先に行っている、近くにある第一牧志公設市場に向かった。活気のある観光市場。
目につくのが、青い魚、イラブチャー。
ここで買った海産物は二階の食堂に持っていくと有料で調理をしてくれるらしい。どんな味がするのだろう。
残念ながら私の家族は興味がないらしく、イラブチャーの味はわからずじまい(実際には、観光客以外はそれほど積極的に食べないらしい)。
沖縄旅行最後の夜は、ホテルが変わった。ロワジールホテル那覇。ここも良いホテルでした。